人名 オベデエドム

 聖書の中には繰り返し出てくる名前が有ります。同一人物であったり、別人であったりして紛らわしい場合が有りますが、初めて読む場合でも、文中の表現や文脈でどちらであるかを判断することが多いと思います。しかし、中には直ぐには判り辛く、予備知識が有ったりきちんと調べたりしないと疑問が残ったままになってしまう場合が有ります。今回は、その一つであると思われる、オベデエドムという名前を取り上げてみたいと思います。

 いつものようにe-swordを開き、最初にEaston, Fausset, ISBE などの聖書辞典を開いて、検索窓に Obededom という名前を入れます。私が頻繁に使うISBEでは第二歴代誌25章24節が最初に示されています。
 辞典の内容を確認するのは後回しにして、KJCで、この名前が何回聖書に現われるかを調べて見ます。先ずKJV+で聖書を開いて、Strong’s の番号を確認してみます。すると、H5654 という番号がついています。今度は聖書ウィンドウの緑色で表示されているH5654という番号をクリックしてから、辞書ウィンドウのタブでKJCを選択します。すると、KJVの聖書では、この名前が20回出てくるという表示と、該当の聖書箇所が表示されます。今回ここでこのツールを使って試みようとしていることは、この20回現われるオベデエドムが同じ人なのか、複数の人なのかを確認することです。


 先ずISBEに戻ってみます。こちらではObed-Edomという綴りで出てきます。名前の意味は「エドム(神格)のしもべ」と「人のしもべ」という二つの説が出ています。ガテに住むペリシテ人であったという説明になっています。この後、複数の立場や役割を与えられたオベデエドムについての言及が有りますが、それが同一人物か別人かの判断はしていません。

 次に、同じ綴りで表示されるEastonを見ます。意味は「エドムのしもべ」にしぼられています。そして、三人のオベデエドムの存在を示しています。
 一人目は、ISBEがペリシテ人としていた人物です。しかし、Eastonの記述によれば、他の聖書箇所の関連から、この人物はペリシテ人の領地に住んでいただけで、祭司の家系のレビ人でコラ族の人であるという判断を示しています。大事な契約の箱を預けるのですから、外国人の家に保管を依頼することは考え難いので、こちらの説が正確であるように思えます。この人の物語については、第二サムエル記6章1〜12節を読んでいただくことにして、ここでは紹介しません。
 二人目は、同じく祭司の家系のレビ人でメラリ族の人という判断をしています。この人は一人目のオベデエドムと同時代の人で、一人目のオベデエドムの家から契約の箱を運ぶ一団の役割と名簿の中に登場します。また、Eastonは、楽隊の指揮や門衛の仕事をするオベデエドムを同じ二人目と判断しています。
 三人目は、時代がずっと後になって現われます。彼の仕事はエルサレムの神殿の会計や備品の管理であったようです。

 最後にFausset を見てみます。ここでは分かち書きのObed Edom という綴りが用いられています。Faussetも微妙に違う理解を示していますが、三人のオベデエドムを示しています。
 一人目は、契約の箱を保管していた人という点は他の辞書と変わりは有りません。しかし、ISBEが二人目のオベデエドムと考えている、門衛をするオベデエドムは、一人目のオベデエドムであると考えています。
 二人目のメラリ族のレビ人であるオベデエドムにの役割は、楽隊の指揮であったろうとFaussetは考えています。そのことは、一人目のオベデエドムの説明の中で解ります。一人が門衛と楽隊の両方を一度に担当することは不可能であるから、門衛のオベデエドムと楽隊のオベデエドムは区別されるということを述べています。
 三人目のオベデエドムはISBEと同じく、後の時代の人で、北王国のヨアシュに捕えられてしまった南王国のアマジア王の時代に神殿の器具の責任者であったと説明しています。加えて、彼は第一のオベデエドムの子孫であっただろうという推測をしています。


まとめ
 こうして確認すると、三人のオベデエドムが聖書の中には登場することがはっきりしてきました。
 しかし、同時に疑問も残ります。二人のオベデエドムが同じ時代に存在し、所属する家が微妙に違いますが、同じ祭司の家系の出身となっているため、ISBEの判断とFaussetの判断が分かれているのです。楽隊の指揮あるいは歌の仕事はどちらに属していたのでしょうか。それは個人的に該当の箇所をじっくり照らし合わせて自分の立場を持つより他にはないということだと思います。

(ざっと目を通したので、勘違いが有るかもしれません。ワードスタディのきっかけにと思って書きました。間違いを見つけた時にはお知らせいただけると幸いです。)

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