ピレモン 17節-19節

ピレモン 17節-19節 構文分析

本文

新改訳
17ですから、もしあなたが私を親しい友と思うなら、私を迎えるように彼を迎えてやってください。
18もし彼があなたに対して損害をかけたか、負債を負っているのでしたら、その請求は私にしてください。
19この手紙は私の自筆です。私がそれを支払います。・・あなたが今のようになれたのもまた、私によるのですが、そのことについては何も言いません。・・

NASB
17If then you regard me a partner, accept him as {you would} me.
18But if he has wronged you in any way or owes you anything, charge that to my account;
19I, Paul, am writing this with my own hand, I will repay it (not to mention to you that you owe to me even your own self as well).


全体的な流れは、日本語の聖書でも表現できていると思います。
「彼を受け入れなさい」という命令に、「私に請求しなさい」という命令が続き、「私が書いている」(つまり、私が保証する)という言葉を添えて、「私が支払う」と締め括っています。


17節に有る「親しい友」という語が、NASBではpartnerという語が使われていて、語感が違うような印象を受けます。e-swordで調べると、ギリシャ語ではコイノノスという語で、分け合う者、仲間、交流の有る者、僚友、同志、戦友、同伴者などの意味を含む語のようです。すると、単純に親しいというよりは、キリスト教の発展や教会の成長と維持のために努力し合う者同士という感じを出したいのであろうと考えられます。
 個人的な好みで考えますと、同志とか戦友という訳語を当てて見たいと思わせられる箇所です。パウロが共に苦労を分かち合ってきた同志、戦友であるピレモンに、実はオネシモも同様に苦労を分かち合い、同じ価値観のために刻苦勉励する同志、戦友になったことをアピールし、どうか自分と同じ同志、戦友として受け入れてくれ、いや、受け入れろと迫っていると考えると、もっとその絆の深さや思い入れが理解できるというものではないでしょうか。


構文分析をするときに、とても時間をかけて調べた部分が有りました。19節のNASBでは括弧( )の中に入れられている部分の、文法的なつながりについてでした。ギリシャ語の聖書を見ると、そこは不定詞表現ではなくて、節になっています。文法書なども見たのでしすが、私の習得レベルがまだ低いため、すっきりわかる解説を見つけられませんでした。それでe-swordについているVWSという注解に出ている説明をそのまま採用しました。どうもパウロが他のところでも使ったことの有る、慣用表現的なものらしいのです。so that I may not というのが字義通りの意味合いで、前半部分の I am writing を修飾すると解説されています。それで、構文分分析も、その表現を使い、そういう修飾関係になるように配置しました。それで、NASBの表現になっていないことを示すために、so that 節に赤の下線を施しました。また、本文では、括弧( )が19節の末尾に付くのですが、構文分析では間に入るので、末尾にも括弧( )を示し、それが上に表記されていることを↓で示しました。

括弧( )の中の表現でパウロが言いたいことは、「あなたもキリスト教徒になり、今のように霊的な成長をし、他のキリスト教徒の世話をする立場になったのは、私の宣教と教育の結果であるから、そう意味であなたは私に負債があるが、それはいちいち私が持ち出したりしないでも済むように(私が保証の意味で自筆で書いている)」というようなことになります。

オネシモという奴隷は、ピレモンのお金を盗んだであろうという推測は、こういうパウロの言葉からも出てくるのです。


ある注解では、この手紙を読んだピレモンは笑ったであろうと書いています。私が払うと書いたパウロは獄中に居て、財産も無かったと推測してのことです。そこで、私もピレモンの考えを推測してみました。
 「パウロ先生。先生は財産が無いじゃないですか。そんなことを書いても払えないでしょう。でも解かっていますよ。先生を通してイエス・キリストへの信仰を得て、その拡大のために努力している私には、先生の恩は余りあるものです。もう先払いでいただいたも同然ですよ。こんな書き方をなさらくても、ちゃんとオネシモを受け入れますよ。」
 こんな感じだったのかもしれないと思います。

 

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