構文分析の例

構文分析の例として、ユダによる手紙の20−21節を取り上げてみたいと思います。

接続詞は一番上に置きます。また、呼び掛けの言葉は、主語そのものとは言えませんから、別に取り分けました。

主節を探す作業に入ります。接続詞に従うことなく、文頭もしくは、文中のコンマの後などに来る「主語+動詞」が主節です。動詞は、動詞だけの時と、will, have, canなどの助動詞を伴っている場合が有ります。今回は命令文なので、主語は有りません。keepは目的語を取る第3文型になります。in the love of God の部分は、場所を表す前置詞句です。この文の主旨の部分ですので、ちょっとルールを無視して、in the love of Godも主節と同じ行に示しても良いかもしれません。

残りの部分の修飾関係を考えます。今回の文の他の部分は、三つの分詞句で構成されています。分詞句は、ここでは動詞などを修飾、説明する副詞用法です。20節に、主節より先に示されている分詞句は、強調のために先に配置されています。
 二つ目の分詞句には、21節に有る主節の動詞、keepの修飾と、20節に有る別の分詞buildingの修飾の二つの可能性が有ります。可能性が複数有る場合は、直近の語に着けるというルールと、文の意味上よりつながりが深い方を優先するというルールから、prayingは前の分詞、bulidingを修飾すると判断します。
 三つ目の分詞は、主節のkeepが近くにあり、文脈的にもkeepを修飾すると考えるのが自然だと判断できます。

e-swordのKJV+などの、Strong's number を照合すると、二つの英語がギリシャ語では一つの言葉であったりします。そういうものは、ハイフンでつなげて表示しました。

こうして、画像のような構文分析の図が出来上がります。

この構文分析を元にすると、読みやすい日本語訳にする努力をした聖書の訳文とは少し違った訳になってきます。それを以下に示したいと思います。


新改訳

20 しかし、愛する人々よ。あなたがたは、自分の持っている最も聖い信仰の上に自分自身を築き上げ、聖霊によって祈り、
21 神の愛のうちに自分自身を保ち、永遠のいのちに至らせる、私たちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。


構文分析結果による訳

20 しかし、(接続詞)
あなたがた、愛する者たちよ。 (呼び掛け)
聖霊によって祈ることを通して、あなたがた自身を最もきよい信仰の上に築き上げることによって、 (手段を表す、分詞の副詞用法)
21 我々の主イエス・キリストの、永遠の命に至る憐れみを待ち望みながら、 (時間、付帯状況を表す、分詞の副詞用法)
あなたがた自身を神の愛の中に保ちなさい。 (主節、命令文―この文の中心)


新改訳では、「私たちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい」が命令の中心と理解できる日本語になっていますが、実際は、「あなたがた自身を神の愛の中に保ちなさい」が命令の中心なのです。ええ〜!そうなのか!!と書くと大袈裟ですが、こういう発見を楽しんでいただけると嬉しいです。主節を見つけるだけならば、単純に英語の聖書をじっくり見れば良いのですが、全体的な構成まで一目で解り易いようにするために、更に「ちょっとだけ頑張って」をしていただければと思うのです。

次回は、聖書研究と説教を組み立てる視点から、構文分析が有益なテクニックであることを例示してみたいと思います。



お断りしておきますと、私もこの分野では駆け出しです。当ブログをご覧の皆様の中に専門的な立場の方がいらっしゃるならば、間違いの指摘、より良い解釈などのご教示をいただければ幸いです。同時に、このブログは「英語を使って」「ちょっとだけ頑張って」という方針ですから、その範囲を越えるご指摘には応えられないと思います。あしからずご了承ください。

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